「クラトスさんは、今でもロイドもロイドのお母様もすっごく大切に想ってるよ。素敵な
お父様だよね。ダイクおじさんと同じくらい…かっこよくて優しい人だよ」
オレの顔を覗き込んで、コレットは微笑む。
「もしかして、コレット…それを言うために出てきたのか?」
「うん。それもあるかな」
「そっか。ありがとな。今は大丈夫なんだ。そんなにショックじゃなくなってきてる」
「よかった。…でも…」
コレットの顔が曇る。
言いたいことは、わかってる。
「オリジンの封印のことだろ」
「いやなこと言ってごめんね。でも…いくら天使化したクラトスさんでも、体内のマナ
を放射したら…」
「そうだな…生きてられるかわからないな」
やらなきゃならないことは決まってる。でも、そうしたらクラトスは。
のどに、なまりが詰まってるみたいだ。
敵だって割り切れたらよかったのに、それもできない。
たぶん、クラトスはこういうところをお人よしだって言ってたんだろうな。
「だから、だからね、わたしの時みたいに、ロイドたちがわたしのこと助けてくれたみたいに、
クラトスさんを犠牲にしないでオリジンを解放する方法を探そう?」
「コレット…」
「みんなだってわかってくれるよ。ね?」
コレットの言うとおりだ。
オレは誰も犠牲にしたくない。最後までだれも欠けずに世界を再生したい。
「…そうだな。でも、まずはクラトスがどうしてミトスについているのか知りたい。クラトスの
考えを聞きたいんだ。…話はそれからだ」
コレットがじっと見てくる。
オレの言いたいことを、コレットはわかってくれたみたいだった。
「行くんだね。デリス・カーラーンに」
「ああ。明日、アルテスタさんの容態を聞いたら行くよ。ミトスの千年王国を阻止する。…
ミトスと戦う」
「そう…。もう少し、近くに行ってもいい?」
「ああ。…寒いなら中に入るか?」
「ううん、いいの。ロイドの近くにいたいだけなの」
肩にわずかな重みが乗る。コレットの金髪が見えた。
「…サンキュ、コレット」
「どうしてロイドがお礼? お礼言うのはわたしのほうなのに」
いや、オレのほうだよ。
ここに連れ出してくれたこと、話を聞いてくれたこと。
――――大丈夫だって、笑ってくれたこと。
本当に、コレットにはかなわない。
オレが強くなりたいのも、ただこの笑顔が見たいからだ。
「この景色を…シルヴァラントみたいに荒らされてほしくないな」
「させないよ。絶対」
「うん。今度こそ守ろうね」
「ああ」
顔をあげて、コレットが微笑む。
つられて、オレも笑った。
「……そろそろ戻るか。だいぶ夜も更けてきたし」
「そうだね。…っくしゅっ」
「大丈夫か? 雪はいいけど、この寒さはちょっと厄介だな」
「そだねー。ちょっと歩きにくいし…これじゃ転んじゃうかも」
「気をつけろよ」
「うん! ……きゃあっ」
「おわぁ!?」
雪に足を取られたコレットが支えきれず、オレも遺書になって倒れる。
下敷きになったのがオレでよかった。
「コレット、大丈夫か? ――――コレット?」
オレが下なんだから、コレットは服を濡らさずにすんだはずだよな。
オレも外套のおかげでなんともないし、雪がクッションになったのもラッキーだったな。
「ねぇ、ロイド」
「ん?」
「人の体温ってこんなにあったかかったんだね」
静かな声が聞こえる。
なんか、聴いてるだけでほっとする。
「なんだよ、突然」
小さく笑ってから、コレットがのんびり言った。
「わたし、生きてるんだなぁって。ロイドと一緒に、ここにいるんだって。そう思ったらすごく嬉しくなったの」
ノイシュがやるみたいに、顔を寄せてくる。
背中に回したままだった手に少しだけ力をこめる。
「コレットはここにいるよ。今だって、これからだって」
「うん…そだね」
コレットの頭に片手を乗せる。
「おかえり、コレット」
「…ただいま、ロイド」
「ロイドがおかえりって言ってくれるとね、本当に戻ってきたんだって実感できるの」
「何度だって言うよ。コレットが笑うんなら。…そのためにも、おまえを守る」
「ロイド…」
オレが弱かったせいで、何度も破った約束。
でもそこで諦めたりしない。したくない。
何度だって約束する。し続ける。
「オレはまだまだ弱いし、コレットを危険にさらすかもしれない。けど」
言いかけたオレの手を握って、コレットは首を振った。
「ううん。――――ロイドはいつだって約束を守ってくれたよ。破ったことなんかないもの」
握られた手からコレットの体温が伝わる。
――――絶対に守らなきゃいけないもの。
「…誓うよ。コレットのことずっと守るから。そのために追いかけてきたんだからな」
コレットがオレを見上げて笑う。
オレもそれに笑い返す。
――――さぁ、最後の戦いだ。
この手は絶対放さない。
「行こう、コレット!」
「うん!」
フラノールのところは大好きです。漫画でもOPでももうロイコレ度が高くて…。
OVAが楽しみです。