episode3

 

on’t  you  marry  him?

 
 

 ダイクは一瞬、時を止めた。
 まじまじと正面に座る少女を見てしまう。
 ―――セイテンノヘキレキ、ってこういうことかもしれねえな。
 普段考えないようなことをしみじみ思う。
「あ、あの、ダイクおじさま?」
「ああ、すまねぇ。ちょいと驚いちまった」
 少女――――コレットはきょとんとしたあとに首をかしげた。
「どうしてですか?」
 どうやら本人は自覚がないらしい。
 ――――婚約相手の相手の父親に、女性が単身挨拶に来るという予想外な行動に。
 16歳で世界再生の旅に出た彼女は、今では19歳になっていた。
 小さいころからの柔和な雰囲気の中に、最近は女性らしさが垣間見えるようになっていた。
 そんな彼女は、ダイクの息子であるロイドと半年前に婚約した。
 今は薬指にシンプルな指輪がはめられているが、近い将来、中指に指輪が通るのだろう。
 とは思っていた。思っていたが。
(まさかコレットが挨拶にくるとはな)
 あまり例に見ないことを、何の疑問も持たず実行してしまうのが彼女らしい。
 いや、慣例など彼女には関係ないのかもしれない。
 自分の中に何か理由があって、必要だと思ったから実行しただけで。
 それだけロイドを想ってくれているということだろうから、ダイクとしては嬉しいことだが。
 そして――――ダイクだけではなく、遠い世界に旅立っていったもう一人の父親もきっとそれは同じで。
 いい相手に巡り会えたなと、言うのだろう。
「それで、あの」
 薄く頬を染めて、コレットは上目遣いにダイクを見る。
 返答はいかに、という様子で待っているコレットに、ダイクは疑問を投げかけた。
「コレット、お前の気持ちはよーく分かってんだがな、なんだって一人で来たんだ。ロイドと一緒でも
問題はねぇと思うんだが」
「……ロイドと一緒じゃ、駄目なんです。ロイドはこの前、一人でおばあさまとお父様に挨拶に来てくれた
んだもの。ロイドと一緒でなきゃ挨拶に行けないなんて、それじゃいけないと思ったから」
 自分もロイドのその誠意に応えたい。そのためにはどうしてもロイド抜きで話さなくてはと思った。
 外見も中身も確かに少女であるのに、時々とても凛々しく見える。
 ふむふむとうなずいて、ダイクはにかっと笑った。
「なるほどな…コレットらしい考えだ。あんな馬鹿息子でよければ、連れ添ってくれや」
 そしてコレットそういう考えが、ダイクは気に入っている。
「おじさま…!」
 ぱぁぁっとコレットの顔に笑みが広がる。
 まるで花が開くように満面に喜色を浮かべて、がばっと頭を下げた。
「ありがとうございます! 私、ロイドと離れません。ずっと一緒にいます!」
「いや、それは本人に言ってやってほしいんだが…」
 結婚するのは自分ではなくロイドだ。
 やはり彼女はどこかずれている。
「そうですよね。でもロイドに言えるかなぁ。なんだか改まって言うの恥ずかしいな」
 先ほどより頬を染めて言うコレットに、ダイクはにかっと笑った。
「結婚式じゃ公衆の面前で言わなきゃなんねぇんだ。それに比べりゃ屁でもないさ」
 
 
「なあ親父、突然森になんか行かせてなんだったんだよ」
「薪が減ってきちまったんだ。それに、新しく家を建てるならいい材木も探さなきゃなんねぇ。コレットに
そんな力仕事できねぇだろうが」
「そっか、全然考えてなかったぜ。サンキュー親父!」
 コレットが単身挨拶に来たことはしばらく黙っておこう、と2人で決めたのだが。
(コレットはこれから苦労するかもしんねぇな)
 心から納得した、という体で笑うロイドに、ダイクはやれやれと息をついたのだった。
 
                                                                     

 


多分企画始まってからすぐ皆さんはお気づきになりましたよね。期待は裏切りません、ハイ(笑)
ということで、3週目はロイコレです~♪この話はずっと書きたかったもので、やっと日の目を見れました。
コレットはとても女の子な感じですが、私の知っているテイルズヒロインは男前な部分もみんな持ってるイメージです。
なのでコレットも、ロイドと結婚するってなったら、単身ダイクのところに「息子さんをください!」って言いに行くと
思うんです。というお話でした。ロイド全然出せなくてごめん!