シンフォニア版かぐや姫

 
 なぜこんな状況になったのか。

 藤林しいなは、頬杖をついてぼんやり思った。
 世界の統合を目指す自分たちは、宿でのんびりと談笑していた。
 それから何かの拍子でジーニアスが「テセアラって月のことだって思ってた」とか
言い出して、それで。
「テセアラは科学の発達した世界だよ。かぐや姫じゃあるまいし、時代遅れなこと言う
のはやめとくれ」
 そう言った。ということは。
(……原因はあたしか……)
 そうだ。そう言ったらコレットが首をかしげて、「かぐや姫?」って聞き返したんだ。
 イガグリの里じゃ誰でも知ってる話だから知らないことにびっくりして、その物語を
話していた。
「やっぱさ、月の国の…かぐや姫だっけ? あれはコレットだな」
「っていうかロイド、おじいさんとおばあさんはどうするのさ」
「そこも変えればいいじゃん。先生とジーニアスをそこにはめればいいな」
 さらさらと紙に書き付けていくロイド。
 呆れ顔のジーニアスがロイドの正面、その右隣にリフィル、反対側にプレセア、
ロイドの隣にコレット、リフィルの隣がしいなである。ちなみにリーガルは料理担当で
厨房にいる。
 ゼロスは、久しぶりに妹の顔を見に行くといって先ほど出て行った。
「で、ロイドは何の役?」
 コレットの問いに、ロイドは胸を張って答えた。
「もちろん、コレットの騎士だ!」
「騎士なんて出てこないよ。人の話は最後まで聞きな」
 しいながはぁ、とため息を吐く。
「ないのかよ! じゃあそれも作っちまおーぜ」
 ロイドがまたもや提案した。
「ロイド、しいなが話してくれる内容をいったん聞いてからにしなさい。収集がつかない
でしょう」
 リフィルが呆れ顔でたしなめる。プレセアも無言でうなずいた。
「あっ…そうだよね。ごめんねしいな」
「いいんだよ、コレット。ロイドはこういうヤツさ」
「ロイドだもんねぇ」
「ジーニアス…それどういう意味だよ」
 納得いかねーと頬杖をついて、ロイドがぶすっとする。
 その頬をコレットがニコニコしながらつつく。
「私、ロイドのそういうとこ好きだよ」
「サンキュ、コレットくらいだよな、そんなこと言ってくれるのなんか」
 ジーニアスをじと目で見てから、ロイドは再び紙面に向かった。
「よし! オリジナルかぐや姫を作るぞ! しいな、続き教えてくれ」
                                

                  ☽

「……ふーん。で、かぐや姫が月に帰っちまったってことで終わりなんだな」
「そうだよ。そのあと帝が、姫の残した手紙と不老不死の薬を世界で一番高い山に持って
いって燃やさせ、そこからは今でも煙が立ち上ってるって話サ」
「……納得できねー! なんでミカドはかぐや姫が帰っちまうのを止められなかったんだ!」
「止めちゃったら面白くないからでしょ」
 ジーニアスが肩をすくめて言うのを、ロイドが握りこぶしを作って反論する。
「本当に好きなら、家来なんかに任せんなよ! 自分の手で取り戻しに行けばいいだろ?」
 なんというか、帝の地位とか話の中の決まりごととかがわかっていない。
「ロイド、帝ってのはテセアラ王と同じ地位の人なんだよ。そんな人間が、ほいほい城の外
に行けるわけないだろ。それに取り戻しに行くなんて無理じゃないか」
 はぁ、としいながため息をつく。
「オレはコレットがいなくなるのは嫌だ。だからその話の結末は変える!」
 
 かぐや姫の話だったはずなのに、なんだかずれてます。
 ポツリとプレセアが呟いた。
 
 
                                     

 

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